四季の養生

秋は五臓の中の肺が一番働かさせられる季節です。
環境が段々と寒くなり、体も寒さに対する抵抗力をつけようとしています。
漢方では「肺は気を司る」と言って、肺は体内の気(エネルギー)の巡りを盛んにして、
各臓器の働きを高める作用があると考えています。
気にも二種類あり、一つは「衛気」といって体表の血行を盛んにして抵抗力を強める働きをします。
もう一つは「営気」と言って全身に栄養を補給する働きをします。
秋はスポーツの季節と言って学校などで運動会が行われますが適度な運動をすることで
肺の働きを盛んにして寒さに対する体力作りをしているのです。
寒くなると、すぐ風邪を引く人がいますが、このような体質を「衛気虚」と診て治療します。
毎年、冬になると風邪を引き春が来るまで治らないという人がいますが一週間程度の服用で、
ひと冬中風邪から解放される場合もあり不思議がられます。
花粉症や一部のアトピーの人に「衛気虚」の状態がみられ漢方治療が効果を上げています。
風邪を引くような体調は万病のもとになることがお分かりでしょう。
「衛気虚」によく使用する漢方処方に補気升陽湯(ほきしょうようとう)があります。
 

皮膚のかゆみの原因 水滞はない場合も

皮膚のかゆみでは、乾燥や皮脂不足も原因となることから、前述した水滞以外が原因のこともあります。花粉症の時期に皮膚にアレルギー症状がでてきてかゆくなるという方は確かに水滞が原因である可能性が高いです。しかし、通年を通して肌にアレルギーがあるという方は、「血虚」が原因となっていることも多いです。血の循環が滞ることで、皮膚に栄養がいきわたらなくなり、結果として皮脂の分泌が低下して、皮膚の乾燥へとつながります。花粉症シーズンに皮膚のアレルギー症状で来局した方をカウンセリングする際には、そのシーズン以外の肌の状態を確認すると良いです。

もし、普段からむくみなどはひどくなく、かつ、花粉がない状態でも皮膚に湿疹やかゆみが出やすいということであれば、水滞が原因ではなく、血虚の可能性があります。

皮膚の不調に対する漢方薬

皮膚は他の様々な身体の不調ともつながりやすいため、他の症状も踏まえて漢方薬を選ぶ必要があります。皮膚のかゆみの他に、赤みとかゆみがある方には黄連解毒湯、冷え症で皮膚の乾燥がひどい方には当帰飲子、疲れやすくむくみやすい方には六味地黄丸、また体力がなく疲労倦怠感がある方には真武湯が向いています。加えて、皮膚のかゆみだけでなく、不眠傾向がある方には加味帰脾湯が適しています。さらに、皮膚のアレルギー症状が慢性化したため黒ずんでしまい、さらに鼻炎も伴っているといったさらに酷い方には荊芥連翹湯が良いです。

身体の内面から考えてみると、五臓六腑と皮膚とは密接に関連することが古来より知られています。現代でも皮膚は内臓の状態を見るのに適していると考えられています。その中でも、脾が弱る脾虚による皮膚の不調には、補中益気湯が有効です。

最新のメカニズム研究では、腸管免疫機能を高めることで免疫のバランスを調えることがわかりました。それによってIgE抗体産生を抑え、結果としてアレルギー反応が起こらないようになります。西洋医学においても、皮膚の不調には外用薬だけでなく、ビタミン剤などで内面から治す治療も同時に行います。漢方医学でも内面から治すことも大切にします。

漢方医学の「気・血・水」で考える 花粉症の原因

漢方医学での基礎となる「気・血・水」で考えた時に、花粉症で鼻水やくしゃみといった症状が出る方では、体内で水の偏りが生じている、「水滞」が原因となっていることが多いです。むくみやすい体質でもあり、むくみが鼻に来ると鼻炎症状がでます。人によっては水滞がさらに肌にも影響し、湿疹がでる人もいます。

漢方医学の「証」で考える 花粉症の患者タイプと漢方薬

また、こちらも漢方医学の基礎のひとつである「証」によって考えた時、花粉症の患者タイプとしては大まかに下記3つに分けられます。
(1)身体が冷えている方
(2)身体が熱くなっている方
(3)中間の方

(1)では、サラサラの鼻水が出やすく、例えば、体を強力に温めて水を循環させる効果のある附子が入った、麻黄附子細辛湯が良いでしょう。
(2)では、赤ら顔や強い鼻づまり、のどの渇きといった症状が出やすく、強力に身体を冷やす石膏を含有した辛夷清肺湯などが良いと考えられます。
(3)の場合には、鼻水と鼻づまりが共存した状態です。これには、風邪の引き始めで有名な葛根湯に、鼻の通りを良くする辛夷と副鼻腔炎に効果のある川芎が加わった葛根湯加川芎辛夷が良いと思います。

 

只今、花粉症の最盛期です。

花粉症に代表される「アレルギー性鼻炎」とは、鼻腔粘膜などが、花粉、動物、ダニ、カビ、ハウスダスト(ほこり)など特定の物質にアレルギー反応を起こし、「くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血」といった症状を現す鼻炎をいいます。人間のからだは、細菌やウイルスが体内に侵入したとき、「抗原抗体反応」を起こしてからだを守ろうとします。ところが、本来からだには害のないはずの物質によっても、こうした反応が起こることがあり、これをアレルギーと呼んでいます。例えば、花粉はそれ自体無害ですが、人によっては吸い込んだ花粉を外敵と判断して、体外に追い出そうと「くしゃみ」「鼻水」といった症状を引き起こします。 こうしたアレルギーを訴える人は年々増加しており、花粉などによる季節性のアレルギーだけでなく、ダニ、カビ、ハウスダスト(ほこり)など、一年にわたって起こる通年性の鼻炎も増えています。では、同じ環境の中にいても、症状が出る人とまったく無反応の人とがいるのはなぜでしょう? 漢方では、体内の栄養物質などの過不足のバランスがとれていなかったり、外の環境に対する防御力が弱いと、からだに不調をきたすと考えられています。同じ環境でも、個人ごとの体質などによって、そうした「適応力」に差ができるため、症状が出る人と、出ない人がいるわけです。

漢方の考え方では、アレルギー性鼻炎を起こす最も大きな原因は、からだの中の過剰な水分とされています。普段から冷たい飲食物をとり過ぎたり、過労やストレスがたまったりすると、胃腸のはたらきが衰えて水分代謝が悪くなります。こうなると消化吸収力も低下するので、飲食物がしっかり代謝されずに体内に残ることがあります。これらは病的な水分なので、からだの生理機能に影響を与え、漢方でいう「肺」(鼻やのどの症状に関わるとされる)の防御力も低下します。

このようにからだの中にいったん病的な水分がたまると、水分代謝はなかなか改善されません。そのため、毎年春先には花粉症になるなど、長期にわたってアレルギー症状に悩まされるというわけです。

冬は五行説では腎に配当されています。冷えにご用心!

 寒くなると末梢血管が冷えのために縮まり血圧が上がります。お風呂など
で急に血圧が上がり、救急車騒ぎになる方が毎年秋から冬にかけて急増して
います。
 身体が冷えると細胞への血液の供給が十分に行われず、必要な酸素や栄養
分が不足し、不必要なものが溜まってきます。すると細胞の働きは低下し、
色々な変化を来すようになってきます。
 冷えには衣服や住まいなどの環境の改善と共に、食事の注意が非常に大事
です。冬は生野菜、果物、生もの、冷たい飲み物を控えて、火を通して食べ
ること、砂糖より塩分を摂ることなどが大切です。
 東洋医学には西洋医学にない考え方があります。使用する薬物を、温める
働きのあるものと冷やす働きのあるものとに区別していることです。冷えに
対して使用する漢方薬も、全身的な冷えに対するもの、下半身の冷えに対す
るもの、下腹部の冷えに対するもの、冷えのぼせ、ふる血を積極的に循環さ
せるためなど、それぞれの病態に応じて数え切れないほどの薬方を使い分け
ます。
 漢方薬の効果は、よく病態を見極めて適切な薬方を使用した時は、驚くほ
どの効果を見ることが多々あります。漢方薬といえば、長く服用するものと
思っている人が多いようですが、一服或は数日の服用で症状が改善してしま
う例のあることをご存じない人もいるようです。

秋は肺大腸経が酷使される季節です。

季節は秋なのに残暑が厳しい今日この頃、秋は大気の収縮を受け肺(呼吸器)が酷使される季節です。暑い夏に汗をかき汗腺が開ききっているところに秋の燥気が入り込み咳、鼻炎、喘息などが発症しやすくなります。そろそろ稲科の花粉も飛び始めていて目のかゆみ、くしゃみ、鼻水などのアレルギー症状も散見されてきました。このような初秋の諸症状に漢方薬は効果的です。あなたの体質の合わせた漢方薬を調合いたします。ぜひご相談ください。

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